2021年6月9日に日本翻訳連盟(JTF)がオンラインで開催した翻訳・通訳業界調査報告会を視聴しました。
日本のLSP(翻訳会社)と個人翻訳者を対象として、2020年秋に実施された「コロナ禍による事業影響」と「機械翻訳の利用状況」に関する調査の分析が発表されました。個人の部では、これに翻訳者の年代、性別、収入、単価推移の分析が加わります。
コロナ禍による事業影響について、ほぼ想像通りで新しい発見はありませんでした。LSP大手に影響が比較的少ないというのは、ポートフォリオが大きいほど、そのなかに「勝ち組」産業が網羅される結果ではないかと思いました。
MT(機械翻訳)については、大手LSPを中心に利用が広がってきていることがデータから明白に読み取れます。全体の3割がすでに導入済み、また同3割が今後の導入を検討中のとのこと。当然ながら大手のほうが取り扱う翻訳量自体も多いわけで、MTの絶対量は確実に増えているものと思われます。また、PE(ポストエディティング)を既に受託している個人翻訳者(専業)も3割近に及びます。
調査からは見えてきませんが、本当はソースクライアントである産業界でのMT使用状況が気になるところです。しかし、社内翻訳者の36%強がMTを使用しているので、その数字が企業におけるMT普及の裏返しなのかもしれない、という趣旨のコメントがありました。
日本市場に限った調査ではありますが、今後の翻訳業界の方向性について重要な示唆が得られました。
(*元データについては、2020年度翻訳白書(第6回業界調査報告書)として通販サイトから購入可能。)